使える舞台用語集

 舞台や劇場で新しく仕事をはじめる方や、演劇をはじめられる方、音楽団体などで劇場を使われる方にとって、
舞台独特の業界用語は難解なものがあるかと思いますが、特に仕事とされる方にとっては、必ず覚えなければ
ならないものですので、ここではそんな舞台用語、特に舞台の現場で実際に使われている専門用語を中心に
基礎から詳しく解説いたします。

 なお、私自身が劇場で働いている舞台技術スタッフですので、スタッフ側からの視点となっている部分もあることを
ご了承ください。

 まずは、真っ先に覚えなければならない数点を解説します。

上手・下手 「じょうず」・「へた」ではなく「かみて」・「しもて」と読みます。
舞台上での左右方向をあらわす言葉で、舞台上における前後左右を表すときに、前後方向は一般的に
「舞台前」・「舞台奥」といいまして、当然客席側が「舞台前」となりますが、左右方向においては、客席
から舞台を見た場合と、舞台に立って客席を向いた場合では左右が逆になりますし、舞台上でもどちらを
向いているかによって、「前後左右」の方向は変わってしまいますので、客席から見て右側を「上手
客席から見て左側を「下手」とよんでいます。
言葉のいわれについては諸説ありますが、舞台において絶対に必要な言葉ですので、機械的にでも
覚えるようにしてください。
尺・寸・分 しゃく」・「すん」・「」と読みまして、日本古来の尺貫法における長さの単位です。
いまや建築業界と舞台業界でしか使用していないと思われる単位ですが、舞台上においては今でも
メートル法ではなく尺貫法で長さを表していますので、必ず覚えなければなりません。
「1尺」=「10寸」「1寸」=「10分」といった関係で、
「1尺」は30.3cm ・ 「1寸」は3.03cm ・ 「1分」は3.03mm
となります。
さらに上の(「けん」と読みます)があり、この単位だけ十進法ではなく「1間」=「6尺」となりまして
「1間」は181.8cmとなります。

ちなみに長さは尺貫法ですが、重さに関しては一般的なKg(キログラム)を使用します。
バミリ 位置を決めてしるしをつけておく事を「バミル」といい、そのしるしを「バミリ」といいます。
舞台上での位置決めはいろいろありまして、代表的なのは役者さんやソロ演奏者の立ち位置などの
人が立つ場所ですが、演劇のセットや指揮台・ピアノ・椅子など、途中で動かすものを置く場所などや
吊り物(舞台上に吊るす物)の高さを決めておく場合など、舞台において位置を決める場合はほとんどが
「バミリ」という言葉を使います。
「バミリ」に使用するものとしては、一般的にビニールテープを使用しますが、劇場によって、場所によって
使用するものが制限される(吊り物の綱などの場合、ひもを使用したりする)場合がありますので、必ず
その劇場の職員に確認するようにして下さい。
 次に舞台上での時間的な流れ、進行にそった用語の解説をします。
入り時間 「いりじかん」とよみまして、技術スタッフや催し物の主催者・出演者などが会場・劇場に到着し、
作業をはじめる時間
をいいます。
外部のスタッフの入り時間に合わせて会場のスタッフもスタンバイする、舞台の準備が出来、
リハーサルが出来る時間に合わせて出演者の入り時間を決めるなどという使い方をします。
おはよう
ございます
普通に朝の挨拶の言葉ですが、舞台・TV業界などでは何時になっても、たとえ深夜に会ったとしても、
その日はじめて会った方への挨拶は「おはようございます」とされています。
搬入 はんにゅう」と読みます。
舞台で使用するセット・楽器等を外部などから舞台に運び入れる事をいいます。
仕込み 料理用語でも「下準備」のような意味で使用されていますが、舞台においては準備のすべてをさします。
搬入からリハーサルまでの間の準備時間すべてを「仕込み」といい、「仕込み」をすることを「仕込む」と
いったりします。
リハーサル 実際の公演に向けての練習・確認作業です。芝居などでは「ゲネプロ」といったりします。
一般的には出演者が最終練習・確認をすることを指しますが、同時にバンドや技術スタッフの確認作業も
行います。
TV業界では「テクリハ」(テクニカルリハーサル)・「カメリハ」(カメラリハーサル)といった技術スタッフの
リハーサル専用の用語もあります。
本番 実際にお客様を迎えての公演・講演・収録などを行うことをいいます。
転換 舞台での場面転換の事を指しまして、芝居のセットを入れ替える、オーケストラなどの楽器や椅子を
入れ替える場合などに使います。
どんちょうなどの幕を下ろして行う場合もありますし、幕を下ろさない場合には、
 照明を暗くして転換を行う「暗転」(「あんてん」とよみます)
 明るいままでお客様から見える状態で転換する「明転」(「めいてん」とよみます)
といういいかたをします。
ばらし 本番を終えての撤収作業を「ばらし」・「ばらす」といいます。
本番中に使用しなくなったものを片付ける場合にも使用します。
搬出 「はんしゅつ」とよみます。
搬入の反対でセット・楽器などを舞台上からトラック等に荷物を運び出すことをいいます。
おつかれ
さまでした
すべての作業を終えた後の挨拶ですが、舞台・TV等の業界では、たいていの方が「おつかれさまでした」
という挨拶を使用しています。
 次に、仕込み・リハーサル・本番などで使用する、特に変わった言葉を解説します。
はける 舞台上からいなくなる・なくなる事で、出演者が舞台上から舞台袖に出て行く場合、転換でセットなどを片付ける
場合などに使用します。
TV業界では物を片付ける場合は「わらう」といったりします。
ころす 一見物騒な言葉ですが、舞台においてはセット、特に上部から吊っている物の高さや音響のレベル(音の大きさ)を
固定して、そこから動かない(動かさない)ようにする事をさします。
ぬすむ これも物騒な言葉ですが、舞台上では仕込み中などに吊っている物(吊るための物)を、他の作業の邪魔にならない
範囲である程度下げておく場合や、音響用語でマイクがいつ使われるかわからない場合などに、少しだけ音量を
上げておく場合などに使用します。
タッパ 舞台上における物の高さをいいます。
セットの高さはもちろん、劇場の舞台上部(すのこ)までの高さや、時には人の身長も「タッパ」といいます。
吊り物バトンの一番上まで飛ばした場合の高さを「飛びタッパ」と読んだりします。
ドン 舞台上において吊り物や幕などをめいっぱい動かす事をいいます。
吊り物をめいっぱい飛ばしておく(最も上に上げておく事です)事を「ドンまでとばす」や「ドンとび」といい、
袖幕(舞台の左右にある幕)をめいっぱい開くことを「ドンまでひらく」や「ドンびらき」といいます。

なお、緞帳(どんちょう:舞台の一番前にある客席空間とを仕切る厚い幕)のことをして「ドン」という場合も
あるので注意が必要です。
(2枚以上あるときの「1ドン」「2ドン」といった呼び方や、飛ばすときに「ドンアップ」などと言うことがあります)
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